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re-kitchen/so
江東区にあるマンションのキッチンリフォーム。
築2年半という新しいマンションだが、クライアント家族にとってすこぶる使いにくいキッチンとのことで、リフォームの依頼である。初めて伺ったときに感じたのは「確かに使いづらそう」。どんな構成の家庭でも対応できるように考えたのであろうが、意外と中途半端な寸法なのだ。
そこで、収納裏側にあるトイレ空間まで巻き込んで収納の機能化を図る。
それぞれ収納に合わせた奥行きや跳ね上げ式の水切り棚、スライド棚付きの抽出、、、、などあらゆるところに工夫がなされている。
また写真左、シンク側の壁の裏側は現在『DEN』となっているが、将来、今は小さい4人のお子さんが成長され、独立された頃には、この壁が取り払われ、オープンタイプのキッチンと変身する予定である。
デベロッパーはもっと考えるべきだ。キッチンのこと、レイアウトのこと、オプション家具のこと。自分たちの利益(=空間と費用の効率化)のみを追求するのではなく、購入者(=暮らしやすさ)の利益をも考えなければならないと思う。購入者はお金を払うので「利益」という言葉は間違いかもしれないが、支払った対価以上の「お得な気持ち」を持って生活してもらうべきである。そうすれば少なくとも2年半でキッチンをリフォームするようなことはないのではと思う。
そしてこのお宅のトイレ空間はキッチン内に電子レンジを置くスペースを確保するために隣接するトイレとの壁を一部撤去し、キッチン収納の奥行きを広げた。そのため、トイレ側の手洗いカウンターも作り替える。
収納量を確保するために、便器にじゃまされないよう引戸を採用する。床から天井までの大型の引戸だ。上部はグレーのカラーガラス、下部はツヤ有りのメラミン化粧合板とした。この配色と素材を選んだ理由は、施主の希望で、ベトナムアートを扉の一部にしたいとのことだったから。これは、合板に漆を塗り、そこに卵の殻で絵を描いていく。なんとも不思議な絵だ。それが光沢のある質感であるため、あたかもそのアートがあたりまえのように家具の中に溶け込んでいる。
そのアートを中心に素材と色を決めていった結果、黒い扉に、黒の人工大理石、グレーのカラーガラス、グレーの手洗いボウルという組み合わせにした。単に用をたすだけの極めて小さな空間なのだが、何とも豊かな表情を持った空間に仕上がった。
photo by studio kaz